- 空乃蒼(そらの・あおい)
県立桜ヶ丘高校3年生、光子暦196年度卒業予定の18歳。高校での成績は中の上で、現在横浜国立大学の受験を終えて審査結果待ち。夕暮赤音、林野碧、水沢透ら3人とは何らかの血縁関係にあるらしいが、どういう関係かまでは本人も知らない。
横浜国立大学(結構レベルが高い)については多分落ちたであろうと蒼本人は思っているので、改めて今後の進路についての相談を透に持ちかけたところ、相談ついでに“Blue Sky”の施設見学をしてみよう、という話になる。蒼はどちらかと言うと文系で、本来は研究施設などとはまるで縁が無いのだが、状況に流されやすく、元来人の誘いを断るのが下手であることがここで大きく災いしている。
大雑把に省略すると、そのまま状況に流されて適性試験を受けてみたらいつの間にやらRGB−01ブリッツのパイロットに抜擢されていた、というお話(嘘ではない)なのだが、そのうち蒼自身がブリッツに愛着を持ってしまったりして、惰性で暫くBlue Skyに滞在していたらアニヒレィスが叛乱を起こしてしまったりして、結局家に帰れなくなってしまった。
しかし、オペレーション レイジング・ブルー発動時には拒否権を与えられていたにも関わらず自らの意志で出撃を表明するなど、見かけによらず芯の強い側面も持ち合わせている。
性格としてはこれと言って目立つところはないが、やや引っ込み思案なわりに人と仲良くなるのは早く、そして流されやすい。
好きな言葉は「平穏」。
- 夕暮赤音(ゆうぐれ・あかね)
県立平沼高校3年生、光子暦196年度に何とか卒業見込みの18歳。成績は下の上だが、赤点だけは一度も取ったことが無いのが密かな自慢。進学予定は特に無く、何かの専門職にでもついてみようかと考えつつ適当に遊び歩いていたら街中でばったり蒼に出会う。興味本位で衛星軌道上までついていき、試しに適性試験を受けてみたら1発合格で、希望どおりにRGB−02ローアイゼンのパイロットという専門職に就いてしまった。長所について訊かれたら迷わず「人よりもかなり運がいいところ」と答えるのは伊達ではなく、稀有な人材であることだけはまず間違いない。しかしこの稀な幸運さと楽天的な性格はローアイゼン(II)の偏った性能を引き出すために他の何よりも必要なものであり、開発者からもその2点だけについては大きな期待が寄せられている。
性格としては前述のとおり楽天的で大雑把で、言いたいことは何でも言う。何より、何が起きても何とかすれば何とかなると本気で考えているところが素晴らしい(無論、具体的根拠は何も無い)。本来絶望的な本作戦においては、ある意味、最も頼れるパイロットといえる。
赤音は常に奇妙な形のヘアバンド(?)を身に付けているが、それがあまりに似合っているからか、誰もそのことに触れようとはしない。
尚、財布の紐はかなり固い方である。
- 林野碧(はやしの・みどり)
国立スタットフォード大学附属高校3年生、同じく光子暦196年度卒業見込みの18歳。成績は秀才の称号がつくほどで、既にベルリン大学への進学が決定していたが、後学のためにと世界有数の研究機関と名高い“Blue Sky”の施設見学に出向いたところ、その場でRGB−03ゲミュートのパイロットとしてスカウトされてしまう。普通なら断るところだが、しかしゲミュートについての研究内容を自由に閲覧してよい、という交換条件がついた(世界の最先端技術を公開前に見られるのだから、かなり異例の好条件である)ので、ゲミュートの評価試験が終了するまではステーションに滞在することになった。その後の経緯は蒼と同様で、アニヒレィスの叛乱のせいで地上に帰れなくなってしまった。
碧は少々変わった形の眼鏡をかけているが、彼女は先天的にやや遠視であり、近くのものを見るのが少々辛いので、手元の書物を見たりするときだけそのレンズを通して物を見ている。本来、碧にとっての眼鏡はそれだけのものでよかったのだが、BIOSを通じてゲミュートを操縦する際には、この眼鏡はディストーションレーザーの重力レンズの屈折角を決める照準器として知覚される。簡単に言うと、この眼鏡の両方のレンズを通じて見た目標をゲミュートのFCS(BiFCS-LOCK)がロックオンする、というわけである(眼鏡自体には何の手も加えられていないが、BIOSのサブシステムであるBiFCSがそう解釈する、ということ)。
性格としては、合理指向で納得できないものはとことんまで追及する。元来好奇心は強い方で、それが勉学面での優秀さに繋がっているのだが、幾分余裕が足りないせいか、外面的にはかなりきつい性格に見える。
尚、碧自身は透をライバル視していたのに、いざパイロットになってみたら何故か落第寸前だった赤音と同じ扱いであると言うことを結構気にしている。
- 水沢透(みずさわ・とおる)
光子暦196年3月にケルン大学理学部物理学科を3年で卒業(1年飛び級)後、大学院には進学せずに軌道ステーション“Blue Sky”に就職。現在22歳。Blue Skyと言えば世界有数の技術力を持つと名高い研究機関であり、学部生風情がおいそれと就職できるものではない。それゆえに、透を知る者達の彼女に対する見解は「聡明な女性」ということで概ね一致しており、特に親交のある蒼などからは、ことあるごとに何かと頼りにされている。
Blue Skyにおける透の役割は、主にRGBシリーズ開発計画の統括管理補佐で、試作機アルスターのパイロットも兼任している(蒼が来る前はブリッツ2号機のテストパイロットもやっていた)。統括管理補佐とは言っても、研究所に入ってまだ1年と日も浅く、研究者としては半人前の彼女の権限はそれほど大きくないわけで、実際の仕事としては、管理業務の見習いをしながら現場の技術を習得しているようなものである。そして、アルスターのパイロットを兼任している、と述べた時点でお気付きかもしれないが、実は透のBlue Sky就職経緯は、碧のパターンに近い。
ところで、RGBシステムに対する適正は、DNAの配列構造に大きく依存する。つまり、適正の高いパイロットの血縁者は、やはり適正が高い可能性が十分にある。そういうわけで、蒼と碧をBlue Skyに招いたのは透なのであるが、赤音については特に呼ぶ理由が見つからずにどうしたものかと頭を悩ませていたところ、当の赤音はしっかり蒼にくっついて来ていて、1人だけ入場許可が無くて入港管理室で揉めていた所を保護。都合が良かったので、そのまま適性試験を受けさせてパイロットに仕立て上げてしまった、というのが実際の経緯である。
しかしその後に実際に緊急事態が発生してしまい、RGBシリーズを出撃させなければならない、という状況に陥ったとき、透は蒼達3人にこの計画から降りるようにと勧めた。・・・結局、それぞれの思惑もあって、誰も降りることは無かったのであるが。
一方で、3人が出撃したあとにアルスターの改造計画を持ちかけ、その案を通し、ブリッツ、ローアイゼン、ゲミュートの開発者連中を無理を言って総動員し、その陣頭指揮をとって驚異的短時間でアルスター・ファプルクを完成させたのは、他でもない透自身である。何が彼女にそこまでさせるのかは誰の知るところでもないが、ここでもうひとつ重大な事実が浮かび上がる。出撃時点で透は少なくとも24時間、全く睡眠を取っていない、ということだ。これは致命的なことである。BIOSによって駆動する機体の性能は、パイロットの精神的消耗に強く影響される。だから他の3人には出撃前に12時間の余暇が与えられたと言うのに、透は24時間殆ど休み無く働いた後で出撃しなければならず、しかも作戦遂行のために残された時間は半分しかない。
雇用の経緯については周囲の印象と多少違ったところがあるが、基本的に聡明で人当たりが良く、大らかな心を持った女性である。
ただし、料理だけは壊滅的に下手。
- ゼノン=ラシュパルク(Xenon=Laspark)
軌道ステーション“Blue Sky”12代目所長。花も恥らう42歳独身(自称)。世界にその名を知られる研究機関Blue Skyのトップとしては異例の若さであり、一部では血統がどうのと囁かれるが、研究者としての実力は確かなものがある。物理学分野における世界的な権威なのであるが、しかしその風貌はいわゆる学者然としたものではなく、どちらかというと近所の気のいいおじさん、と言った方がイメージに合う。
研究所の最高責任者として各セクションをまとめるのが主な仕事であるが、それと同時に極秘扱いのRGBシリーズ開発計画の統括管理も行っている。しかしゼノンは責任者と言うよりは技術屋気質で、人をまとめるのはあまり得意ではない。196年04月を境に急に現場のスケジュールが改善されていったところをみると、実はそれ以降の現場管理は殆ど透に任されていたのではないか、という疑惑が浮上してくる(しかし、文句を言ってまた労働条件が悪くなるのは望む所ではないので、結局誰もが黙認している)。
ときに、ゼノン博士は赤音とはまた違った意味で非常に運が強い。悪運とも言うべきものである。現に何度も常人なら死ぬような目に遭っているのに、そのたびに彼は一命を取り留め、数ヵ月後には何食わぬ顔で業務に復帰しているのである。特に、196年04月09日のブリッツ1号機暴走事故においては、機体ごと時空断層に飲み込まれそうになったにも関わらず、彼は見事に生還している。
「時空断層に挟まれて帰ってきた人なんて初めて見るよ。博士が死ぬような事故なんて、もう起こりっこないね」
と、不自然にねじれたブリッツの破片を手にとりながら、材質部門の技師は述べたとか。
そんな彼の趣味は古物収集・・・と、本人は主張しているが、端からみるとガラクタを集めているようにしか見えないらしい。
- ヤコフ=ボルツァーノ(Jakow=Bolzano)
数々の製品を扱っているBlue Skyの1部門、「軍事部門」の戦略顧問であり、技術を製品化するにあたって必ず意見を伺う相談役。研究所に出向する際に軍隊を退役しており、元の階級は中佐。軍に留まったならば間違いなく元帥まで行ったと噂される29歳。名前は世襲制だそうで、正確にはヤコフ=ボルツァーノ7世なのだが、本人は7世と呼ばれることを好まない。
オペレーション レイジング・ブルーの作戦立案は、隔離されたBlue Skyの中で唯一軍事戦略のプロフェッショナルであった彼が1人で行ったものである。
元軍人だけあってかなり厳格な印象を受けるが、話してみると意外と話せる好青年で、どんなときにもマナーを忘れない愛煙家(自称)。
- ユアン=アニヒレィス(Jan=Anigrayss)
実年齢25歳、歴史年齢225歳。歴史にその名を残せなかった不遇の天才科学者。原色統一理論を提唱し、世界にかつて無い規模の技術革新をもたらしたが、破壊の羽音事件の首謀者として無期冷凍刑に処され、200年の後にようやく目覚める。
殆どの人間が既に見向きもしない技術の根幹部分を熟知していた彼は一瞬にして世界を掌握し、後に全人類を抹殺すると言って木星圏に用途不明の建造物を構築し始める。その行動原理自体は全く理解不能だが、実際問題として今も彼が汎世界ネットワークの制御を握っていることは由々しき問題であり、それを何とかしないことには状況は悪化する一方である。
人としての彼は、社交性があまりよろしくないが、その反面で数少ない知り合いと深く付き合っていく傾向にある(らしい)。
特技は弁当作り。
- シュタール=ラシュパルク(Star=Laspark)
研究機関“Blue Sky”初代所長。ゼノンの直系の先祖で、家系においては8代前に当たる。無論故人であり、写真は25歳当時のもの。
西暦末期の革新期において時代を牽引したと言われる研究チーム“try−α”(トライ・アルファ)の初期メンバーの1人。try−αには原色統一理論を唱えたユアン=アニヒレィス、その事実検証を行って原色粒子を発見した雪村純らも名を連ねており、彼等が間違いなく当時の技術の最高峰であったことを裏付けている。また、非公式ではあるが、シュタール自身はBIOSのプロトタイプを組んだと言われる。
伝え聞くところによると、彼はかなり気さくで口数が多く、特に自らの親友を自慢するのには時と場所を選ばなかったという。
また、その生涯において複数回の被弾経験を持つ。ゼノンの悪運が天下一品なのは、このシュタールからの隔世遺伝であるらしい。
- 雪村純(ゆきむら・じゅん)
西暦末期に原色粒子を発見した功労者。今や教科書にもその名前が載っている。シュタールやユアンと同じくtry−αの初期メンバーであり、写真は25歳当時のものである。
量子物理学を専門とする彼女のチーム内での主な仕事は、ユアンが打ち立てた理論を理論・実験の両面から検証していくことであった。後にその経験が原色粒子の発見という成果をもたらしている。この二人の仲は個人的にも特に親密で、もしユアン=アニヒレィスが無期冷凍刑に処されていなかったならば、受験生が覚えるべき原色粒子発見者の名前は「アニヒレィス夫人」であったかもしれない。
軌道ステーション“Blue Sky”完成後には、副所長としてシュタールを良く補佐したという。
性格的には、気立てが良く快活で、しかし意外と抜け目の無い女性であったらしい。
尚、好きなおかずは卵焼きで、これが無いとその日の午後は微妙に機嫌が悪い。