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#新世代亜光速宙航戦闘機群(RGBシリーズ)

 軌道ステーション“Blue Sky”において、ゼノン=ラシュパルク博士を中核とした開発スタッフにより完成を見た新機軸の戦闘機。
 結果的に人類の命運を託されることとなった、稼動数にしてたった3機のこの有人戦闘機は、しかしその性能面においてはアニヒレィス配下の無人戦闘機群を圧倒するほどの能力を有する。



*基幹三機種

 RGBシリーズの基幹機種として製作された3機は、基本性能は完成された同一のシステム(RGB−SYSTEM)の上に成り立っているが、固有の武装を運用するためにその外見は大幅に異なり、また、外見に違わずそれぞれ特徴的な性能を持っている。


・RGB−01 宇宙用主力戦闘機 Blitz (ブリッツ)/天駈ける蒼き稲妻

ブリッツ
Product Code : RGB-01
Name : Blitz
Material : XCA + HGA
Generator : Photon Reactor
+ Alchemic Reactor
Operating System : BIOS ver.2.001k
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 2
/* APG-motor x 8
G2CS ver.1.27
Special Ability : R2CS ver.1.12
Arms : PAC / RayGing Blast
Fire Control System : BiFCS-STR
 RGBシリーズのタイプ1。製作された1機目は機動実験中の事故により大破してしまったため、本作戦に参加するこれは2号機である。
 事の発端は、
PC196年04月09日。RGB−01ブリッツ(1号機)が組み立てを完了し、機動試験が行われた日である。満を持して製作されたRGBシリーズのタイプ1であるブリッツの性能は、まさに理論どおりの決して期待を裏切らない高水準のものであり、技術者達は自らの実績に一様に満足した。しかし、長期間に亙って開発されてきたBIOS(Bシステム)を古いものから順に書き換えて使用していくと、最新版のBIOS ver.2.000kで致命的な不都合が起こった。まず、Rシステム超加速機能が過剰に働き、パイロットに精神的負荷をかけるほどに体感時間がスローダウンした。そして、その状態においてGシステムを能動的に併用しようとする(高速回転運動などを行う)と、即座にシステムダウン、機体は再反転した時空の断層に飲み込まれ、圧壊してしまうという事態が発生したのである。自らテストパイロットとなっていた研究主任のゼノン=ラシュパルク博士は奇跡的に一命を取り留めたものの、開発は一時中断を余儀なくされた。
 この緊急事態に開発者は設計理論を1から洗い直し、その原因究明に奔走したが、しかしどこにも原因らしきものは見当たらず、一時はRGBシリーズ自体の廃案も出た。しかし、諦めかけた頃に見つかった原因は、全く意外なところにあった。何と、BIOS ver.2.000kから新たに組み込まれた汎用パラメータ表示に関するプログラムモジュールが原因だったのである。あまりに末端の部分であったので誰も気には留めていなかったのだが、しかしこの部分だけはBlue Sky独自の技術ではなく、一般の表示プログラムを安易に組み込んでいたのである。その汎用パラメータ表示システムは超高速の光子プロセッサによって実行されることを前提として組まれたものであったので、これによって予想を大きく上回る負荷が間脳にかかり、パワーバランスの不安定化、ひいてはシステムダウンを引き起こす原因となっていたのであった。
 後に様々な問題点をクリアして完成したブリッツの2号機は、Bシステムを中心として全ての条件をパイロットに最適化されているため、ずば抜けてはいないが高水準で癖の無い性能を誇り、汎用性が非常に高い。
 メインパイロットは堅実派の空乃蒼(そらの・あおい)


PAC(Particle Accelarate Cannon/パーティクル・アクセラレイト・キャノン):粒子加速砲
 ブリッツの主兵装は、機体前面に装備された2門のPAC/粒子加速砲である。これは微量の重金属粒子をイオン化し、それを砲身内の極性フィールドで加速、高エネルギーを纏った荷電粒子弾として打ち出すものである。この攻撃手段は弾速、威力的には全く普通のものであり、MRPのような特殊破壊効果も無いが、しかしエネルギー消費効率が抜群によく、余程の無茶をしない限りは、撃ちっ放しでも3600秒(機体主観時間)は耐えることが保証されていた。つまり、強度を維持するために常にエネルギーを消費し続ける
HGAの短所を突く攻撃であり、PACによる攻撃は敵機動兵器が防御のために使用するエネルギーでジェネレーターコンデンサを枯渇させ、当て続けることによって、MRPのように確率に頼らず、同じ種類の相手に対しては一定量の攻撃で必ず破壊することが出来た(※機動兵器の制御下にある限り、HGAが外部から与えられる熱エネルギーや力学的エネルギーによって硬度を増すことは無かった)。
 また、パイロットの精神に余裕が出来、RGBシステムが安定した場合には、その余剰出力を利用して拡散粒子砲とすることも可能であった。

 ブリッツは他の2機種と違って副武装を持たないが、その代わりにRGBシステムとPACを連動させて特殊な攻撃を行うことが出来る。

RayGing Blast(レイジング・ブラスト):光子重力渦動砲
 
重力子フィールドを周囲に展開、時空を歪ませた超加速状態において機体そのものを高速回転させると、機体前方の空間に閾値を大きく越えた重力場のひずみが発生する。この状態において粒子加速砲を発射すると、前方のねじれた重力断層空間を砲身外の更なる加速帯として、最終的に光速の98%にも達する荷電粒子弾が螺旋状に、嵐のような勢いで発射される。この攻撃は、収束率も威力もエネルギー効率も全く申し分なかったが、反作用に耐えるだけの安定した重力子フィールドを展開することが出来ないので、高速回転中は機動性が大きく損なわれた。


・RGB−02/Z 宇宙用殲滅機 Roheisen Zwei (ローアイゼン・ツヴァイ/ローアイゼンII)/灼熱の赤き銑鉄

ローアイゼン・ツヴァイ
Product Code : RGB-02/Z
Name : Roheisen Zwei
Material : XCA + HGA
Generator : Photon Reactor
+ Alchemic Reactor
Operating System : BIOS ver.2.000k
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 2
/* APG-motor x 8
G2CS ver.1.27
Special Ability : R2CS ver.1.20
Arms : Randomizer
Radical GunBlaze
Fire Control System : BiFCS-SPR
 RGBシリーズのタイプ2にして、更にそのバージョン2である。基本的に1対多数戦闘に特化されており、その一面のみにおいてはまさに驚異的な性能を発揮する。しかしその反面、兵器としての汎用性は皆無といっても過言ではなく、主兵装ランダマイザーの存在が嫌応無く同士討ちの危険性をほのめすために、後方支援などの任務はむしろ味方殺しとなる公算が高い。
 さて、紆余曲折を経て試作段階から既にバージョン2となっているローアイゼンIIであるが、バージョン1(ローアイゼン)と何が違うのかというと、結局のところ最も大きな違いはその「見た目」である。
 
PC197年01月28日、RGBシリーズ基幹3機種の正規パイロットの選定が無事完了し、選ばれたパイロット達は間もなく自らの機体を目の当たりにすることになったのだが、そのときローアイゼンメインパイロットの夕暮赤音が呟いた一言は、開発担当者達に生涯忘れ得ぬほどの衝撃を与えたという。
「え?これがボクの機体?へえー・・・・・・・・ださっ
 当時のローアイゼン(I型)のフォルムは、ごく普通の戦闘機の機首にそのままガトリング砲(初期型ランダマイザー)を取り付けたようなもので、質実剛健と言えば聞こえは良いが、それが普通の女の子からするとかなりださっぽいなどという事実には、性能至上主義者の集まりであるローアイゼン開発メンバーは、誰一人として気がついていなかったのである。
 かくして「ダサくない外見」を第一目標に急遽大改造が行われたローアイゼンは、性能はともかく見た目が原形をとどめなくなってしまったがために、型番も更新して「ローアイゼン・ツヴァイ」となったのだった。
 メインパイロットの夕暮赤音(ゆうぐれ・あかね)は3人の中で最も楽天主義であり、このローアイゼンの運用については他の2機と比べて全く違った方向性で期待が寄せられている。
ローアイゼン(初期型)

Randomizer(ランダマイザー):乱数速射砲
 ローアイゼンの主兵装は可能性に全てを賭けた不安定兵器、その名も乱数速射砲(ランダマイザー)である。これは両翼に装備された物理衝撃砲(PIC/Physical Impact Cannon)から発射される弾丸の軌道をその砲口に生成した圧縮偏向フィールドによって乱数的に捻じ曲げ、円錐状範囲に標準偏差角30度で正規分布的にばら撒く、と言った「画期的な」兵器である。普通、ガトリングなどの実弾速射砲は弾丸を一定軌道に収束させる方向に精力を傾けるものだが、この場合「敢えてばら撒くところに意味がある」と開発者は言う。確かに使いようによっては非常に有効な攻撃手段になりうるが、主兵装にこれを持って来てしまった辺り、ローアイゼン開発主任の意欲的かつ前のめりがちな姿勢が窺える。
 ただ、光速の50%以上で戦闘機動を行うことが前提のRGBシリーズにおいて使用されるランダマイザーの威力は、前進時にはその運動エネルギーを全て上乗せして発射されることになるため、実弾兵器だからといって決して侮れない。

Radical GunBlaze(ラディカル・ガンブレイズ):全方位閃射砲
 1対多数戦闘に特化したローアイゼンIIは、副兵装として、全方位閃射砲“Radical GunBlaze”を搭載している。とは言うものの、機体フォルムを見れば一目瞭然であるが、ローアイゼンIIには全方位を攻撃するための砲門など、どこにもついていない。ラディカル・ガンブレイズとは、機体の周囲に展開された
重力子フィールドを介して重力場を急激に振動させることによって分子配列を大きく歪ませ、そこに存在するものを粉砕する攻撃である。
 実際にこの機能を発動させてみるとよく判るが、機体を中心として重力子フィールドの内側から外側に向かって重力のひずみが同心球状に広がっていくと、それに伴って空間に存在する物質粒子が激しい化学反応を起こし、それらがまとまって同心球面状に爆風を形成する。その爆風が戦車の主砲発射時の閃光によく似ている、ということからこの名が付けられた。・・・実際、それほど似ていないような気もするが、開発者がそう言うのだから仕方が無い。
 さて、このラディカル・ガンブレイズは問答無用の全方位攻撃であり、その長所だけを見るならば、これだけを使用していれば他の兵装など必要ないように思えるかもしれない。しかし、実際にはそんなに都合の良いものではない。先程簡単に「重力場を振動させる」と述べたが、能動的に重力場に変化を与えるためには、パイロットに対してかなりの精神的消耗が要求される。具体的には、パイロットの精神状態が完全に安定し、システム安定度数のColorが限界値の255を指していたとしても、その状態から精神力をシステムが許す限界まで使って、ようやく球面パルス波を4つ形成できるという程度であった。また、「射程距離=重力子フィールド半径」となるために通常の射撃兵装に比べて射程が意外と短く、ラディカル・ガンブレイズは、一見便利そうに見えてその実使いどころの難しい兵装であった。
 尚、ローアイゼン(I)には副武装として拡散爆雷MSM2.55の装備が検討されていたが、これは性能のわりに(※威力はともかく、射出後にRGBシステムの制御から離れ、超加速の恩恵に与れなくなったミサイルの弾体が自動制御で超高速の敵機を捕らえることは殆ど不可能であった)意外とかさばるもので、長期戦になるとまず間違いなく弾切れになる事が予想されていた。これについては開発チーム内でも喧々諤々の議論が交わされたが、結局ラディカル・ガンブレイズの実用化とともに拡散爆雷はその存在意義を失い、あっさりと排除された。




・RGB−03 宇宙用支援戦闘機 Gemüt (ゲミュート)/深遠なる紺碧の御魂

ゲミュート
Product Code : RGB-03
Name : Gemüt
Material : XCA + HGA
Generator : Photon Reactor
+ Alchemic Reactor
Operating System : BIOS ver.2.000k
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 2
/* APG-motor x 8
G2CS ver.1.30
Special Ability : R2CS ver.1.12
Arms : PEC
Distotion LASER
Fire Control System : BiFCS-LOCK
 RGBシリーズのタイプ3。
ローアイゼンと同じく一つの可能性を示唆する機体ではあるが、こちらはより明確に、新機軸兵装ディストーションレーザーを主軸に据えて設計されている。
 メインパイロットは沈着冷静を旨とする林野碧(はやしの・みどり)

PEC(Pulse Enhance Cannon/パルス・エンハンス・キャノン):光子束圧縮砲
 両翼に背負った長大なレーザーキャノンから連射される単相光線砲。便宜上主兵装なのであるが、実はゲミュートは、PECという名前の兵装を装備していない。というのも、コンセプトマシンであるゲミュートは、見てのとおり両翼に巨大なディストーションレーザーを装備しているために他の兵装を装備する余裕が全く無い。そのディストーションレーザーを唯一無二の絶対兵器と定めて開発が進んでいるうちはそれもさして問題視されなかったのだが、いざロールアウト直前になって、これを主兵装に据えるには速射性に難がある、という唯一の欠点が露呈した。機体の完成を待たずに理論だけで設計していたので、
超加速状態における光子コンデンサ充填速度の見積もりが甘かったのである。その時点では作戦実行まで時間も無く、今更機体の再設計を行う余裕も無かったので、製作主任は半ば苦肉の策ではあったが、土壇場で妙案を出した。「どうせ撃てない砲身ならば、その間他のものとして利用してもいいのではないか?」というのである。つまり、ゲミュートのPECとは副兵装のディストーションレーザーの砲身に別系統の低出力速射用光子コンデンサを接続しただけのものであって、それ自体が独立して存在しない。
 かくして、苦し紛れに装備が決定されたPECであったが、しかしこれは予想外に使い勝手の良い、総合的に見てブリッツの主兵装PACと比肩しうるほどのものとなった。原因は、止むに止まれぬ事情で流用したディストーションレーザーの砲身である。この砲身の内部に形成される超高精度重力レンズ(後述)はまさに「遊ばせておくには勿体無い」ほどのもので、エネルギーの塊であるパルスキャノンの光子束を更に圧縮して貫通力を高め、その場凌ぎのエネルギー消費量に似つかわしくない威力を発揮した(ただし、重力レンズの精度がシステム安定度数(Color)に依存するため、その威力も同様に安定度数によって上下する)。
 このPECの信頼性の高さから、コンセプト的にローアイゼンと似通った機体でありながら、ゲミュートは対照的な傑作機と評される。

Distotion LASER(Distotion Light Amplification by Stimulated Emittion of Radiation/ディストーションレーザー):歪曲光子束発振器
 ゲミュートの副兵装は、1対の長砲身が機体そのもののシルエットとして自らの存在を主張してはばからない大型光学兵器、ディストーションレーザーである。一言で表現するならば「曲がるレーザー」。こう表現すると極めて非常識な武器のようであるが、これを実現するためには、やはり常識を覆すに値するだけの労力がかかっている。
 まず「曲げる」以前に、いかにしてレーザーを「収束させる」か、ということに問題があった。通常機動時においては、従来の屈折率を利用した光学レンズによっても十分な収束効果が得られる。しかし、亜光速機動時においてはいかに
XCAを構造材として採用しているRGBシリーズ各機といえども各部に幾ばくかの歪みが生じることは避けられず、それだけでレーザーによる攻撃は十分な効果が得られなくなることが容易に想像されたのである。想像された、という言葉尻からも判る通り、ディストーションレーザーの基礎理論構築は、ゲミュートの実機が稼動を開始するよりも遥かに早くから始まっていた。そもそも、外部から持ち込まれたディストーションレーザーの理論を主軸としてそれを実現するべくゲミュートの機体設計が進められたのだから、当然と言えば当然のことである。
 結局、亜光速機動時における確実なレーザー収束技術の実現に決め手となったのは、Gシステムの重力子制御機能であった。ディストーションレーザーにおいては、まず最初は通常のそれと同じように光学レンズでレーザー光をある程度まで絞り込む。そのままでは十分な攻撃力を発揮できないし、仮に補正レンズをもう一枚用意したとしても、あらゆる方向から不規則にかかる慣性力による歪みには逐一対応できない。そこで、完全に収束していない光子束を補正しないまま砲身内部に放出し、砲身内に形成される強力な圧縮重力場によって光子束を収束させる。いわゆる重力レンズ効果である。この重力レンズ効果を更に発展させる形で、ディストーションレーザーは射出後の光子束が目標に対して偏向するように誘導制御を行う。これと逆に、不安定な高重力場(圧縮偏向フィールド)によって弾道を不規則に曲げるのがランダマイザーである。
 こうしてディストーションレーザーは高威力・高効率、そしてミサイル兵器にすら不可能な亜光速機動時の追尾性能をも兼ね備えるに至った。しかし、実弾と違って光子はそもそもの速度が速すぎるため、誘導するとはいっても通常出力であまり大きな角度をつけることは出来ない。また、ディストーションレーザーは本来ゲミュートの主兵装として開発されたものだが、十分な威力を得るためのチャージ時間が当初の予想よりもかなりかかるため、結局は単発の副兵装という扱いになった。



*試作機



・OVR−128/α 宇宙用試作戦闘機 Alster-vBRG (アルスター・ファプルク/アルスター改)/淀み無きせせらぎ

アルスター・ファプルク
Product Code : OVR-128/α
Name : Alster-vBRG
Material : XCA + HGA
Generator : Photon Reactor
+ Alchemic Reactor
Operating System : BIOS ver.2.001k
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 2
/* APG-motor x 8
G2CS ver.1.30
Special Ability : R2CS ver.1.20
Arms : Hard Point x 3
/* Randomizer
/* Distotion LASER
/* RayGing Blast
Fire Control System : BiFCS-EXAM
 アルスター・ファプルク(アルスター改)はRGBシリーズ全てのプロトタイプとなった機体OVR−128「アルスター」の実戦改修仕様である。アルスター自体は、RGBシリーズのあらゆる可能性を模索するために凡そ200年間もの間細かいバージョンアップを受け続けた完全な試験機体(もはや原形をとどめてはいない)であり、そのため実戦に使用するとなると耐久面などに問題があったが、RGBシリーズの3機がロールアウトする頃にはタイムリミットまで36時間を切っていた。つまり、新規に機体を制作する時間的余裕が無かったし、大破した
ブリッツの1号機を修理しようにも、1号機は事故の際にその構成要素の大半が超重力による量子崩壊を起こしており、全く復旧の見通しが立たなかった。そこで浮上してきたのが、試作機ながら確かに1機の機動兵器として稼動可能であったアルスターである。技師達は正規版3機種を送り出すと休む間も惜しんでこのアルスターの改修作業を開始、理論を遥かに超えた驚異的作業効率で、凡そ11時間半後にはアルスター改を完成させた
 アルスター改は、もとがRGBシリーズの各モジュールの実用試験を目的とした試作機であるがゆえに、ハードポイントシステムによってブリッツローアイゼンIIゲミュートの3機全ての兵装を装備可能である。加えて、3機を完成させた後に改修を加えた機体であるから技術レベルはRGBシリーズの正規版と全く遜色無いのだが、しかし多すぎる機能の制御が煩雑なためにBIOSに厳重なリミッターが課され、実際の出力は低い。よって、汎用性こそ高いものの、総合的には器用貧乏的性能に留まっている。
 尚、“vBRG”は“verbesserung”(フェアベッセルング=改良型)の略表記で、半濁音を伴って「ファプルク」と読む。しかし、これでも長いと感じる場合には、「アルスター・ファプルク」を更に縮めて「アル・ファ」と呼称された。
 メインパイロットは軌道ステーションBlue Sky所属の研究者にしてテストパイロットも兼ねる水沢透(みずさわ・とおる)





#自動制御無人戦闘機群

 現在の主流である無人制御の戦闘機群。通常は汎地球圏光子ネットワークを介して指令を受諾、戦闘行動を行うもので、物理稼動端末の一種である。しかし、ネットワークの制御中枢を掌握されてしまったために、現在はその全てがアニヒレィスの指揮下にある。



・MF−SG126/J10 汎用戦闘機 High-Low (ハイロゥ)

ハイロゥ
Product Code : MF-SG126/J10
Name : High-Low
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : MEGA-Drive
/* thruster x 2
/* APG-motor x 4
Special Ability : None.
Arms : Accelarate-MRP
Fire Control System : DT-025S
 ハイロゥは地球圏各地で使用される汎用戦闘機の中で最も普遍的なものであり、その活動領域は低空から高空、果ては大気圏外までと場所を選ばない。その汎用性の主要因となっているのが推進機関のMEGA-Drive(Multi Engage Gradually Actuate Drive/メガ・ドライヴ/多目的従事漸次始動推進機構)である。要するにコレは何かというと、周囲の環境に合わせてロケットモーターとジェットエンジンを使い分ける多目的用途の推進機関であり、始動後でも環境変化に合わせて自動的に切り替えが行われることが何よりの強みであった。
 ジェネレータはコストパフォーマンスを考慮して通常レベルの
光子反応炉が1基のみで、サブシステムの錬金炉は内蔵していない。そして装甲材がHGAで武装は段階加速式MRPを1門、というのがこのハイロゥの標準装備である。また、宇宙での戦闘に特化してはいないために姿勢制御用推進機構(アポジモーター)が少なく、センサーの有効範囲も全天をカバーしてはいないが、これらの欠点は常に自転し続けることによってある程度カバーされている。FCSはDT社(Drastic Tactics Company)製のDT-025S。これは特に秀でた機能が無いFCSであるが、その分安価であり、唯一の武装である段階加速式MRPを運用するには十分な機能を持っていた。
 最後にOSのInter-FACE 197であるが、これは地球圏統一規格の自律稼動機用OS(光子暦197年版)であり、汎地球圏ネットワークの制御下にある機械はほぼ例外なくこのOSの上で稼動し、ネットワークからの制御命令を忠実に実行し続ける。統一規格になるだけあって、Inter-FACEはそれ自体非常に優秀なOSなのであるが、しかしこの完全すぎる統一規格ゆえに、アニヒレィスの世界制覇はいとも簡単に成し遂げられてしまったといえる。
 総合すると、ハイロゥ単機での戦闘能力は決して高くはないが、それを差し引いてもコストパフォーマンスと汎用性が多機種に比べて圧倒的に優れ、戦力の微調整が可能であるなどの利便性も手伝って、年々改良を重ねならハイロゥシリーズ(現在はJ10型が最新)は初期型から凡そ13年ものロングヒットを飛ばしている。また、その圧倒的なコストパフォーマンスに目をつけて、最小機能版(非武装)のハイロゥを目標に意図的に体当たりさせ、装甲を纏った自己誘導ミサイルとして使用する例も近年では増加しつつある。
 製造元は老舗のS&G社。




・MF−Kn028/B 汎用戦闘機 Bonito (ボニート)

ボニート
Product Code : MF-Kn028/B
Name : Bonito
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : MEGA-Drive
/* thruster x 2
/* APG-motor x 4
Special Ability : None.
Arms : MRP
Fire Control System : DT-025S
 KnM社(Knight for Mobility Corporation)製の汎用戦闘機。発売はPC196年中盤で、明らかにG&A社の
ハイロゥを意識した性能になっている。しかし性能はさほど変わらないもののコスト面ではハイロゥよりも更に頭1つ秀でており、つまり前述の玉砕戦法で特に威力を発揮する。KnM社のこのコンセプトは結果的に大きく当たったようで、現在ではボニートは戦闘機部門でハイロゥに次ぐ大きなシェアを獲得している。しかしKnM社はS&G社が自社開発したMEGA-Driveに代わる汎用推進機関を自社で用意できなかったために唯一の利点であるコストで圧倒的な差をつけることが出来ず、後一歩伸び悩んでいる感は否めない。
 尚、名前の意味は「鰹」。魚群のように使え、ということらしい。




・SA−CF061/B 宇宙用攻撃機 Phalanx (ファランクス)

ファランクス
Product Code : SA-CF047/B
Name : Phalanx
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 2
/* APG-motor x 4
Special Ability : None.
Arms : Accelarate-MRP
MRP
Fire Control System : DT-026A
 CF社(Central Fronteer)製の宇宙用攻撃機。ジェネレーター出力は
ハイロゥボニートとさしてかわらないものの、装甲自体が物理的に分厚いために、意外なほどの耐久力がある。ファランクスは攻撃機であるから元々戦闘機ほどの機動性能は望まれていないのだが、だからといってその他の性能にも特に見るところは無い。このファランクスが真の効力を発揮するのは横一列に隊列を組んだ場合の制圧戦、或いは高い攻撃力を必要とする拠点攻撃であり、他にも偵察機などの楯となって前線へと赴くことも少なくは無い。
 基本的に被弾することを前提としているためにこの手の攻撃機はいわゆる消耗品として扱われる。つまり、最低限の機能さえあればあとは安いに越したことは無いわけで、少なくとも宇宙用攻撃機の分野では、適切なコストダウンに定評のあるCF社が一人勝ちを収めている。




・MS−SG181/P 汎用偵察機 Clockwork (クロックワーク)

クロックワーク
Product Code : MS-SG181/P
Name : Clockwork
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : MEGA-Drive
/* thruster x 2
/* APG-motor x 4
Special Ability : None.
Arms : MRP
Fire Control System : DT-025S
 汎用推進機構MEGA-Driveを搭載した、S&G社製の偵察機。クロックワークはコンセプト的に
ハイロゥよりはハイエンド志向で、実際の性能としても、場所を問わずかなりの高機動性を発揮する。また、基本設計が優秀であるために搭載FCSのDT-025Sとの相性も抜群で、自転しつつ螺旋機動をとりながら、つまりバレル・ロールしながら的確に標的を捕捉し、なおかつその状態から正確な射撃を行うという離れ業を可能としている。
 そもそも当機は偵察機である以上、目標を的確に捕捉することが絶対条件であるわけで、無重力空間で偵察行動を行うためには、それ相応の姿勢制御機構を配置して極力センサーのぶれがなくなるようにするのが普通である。しかし、S&G社はあくまでも汎用性を追及するために、敢えてMEGA-Drive搭載機特有の自転運動をそのまま残し、それに目標捕捉機能を追従させる方針を採った。つまり自機から見て、最低でもずっと回り続ける目標を捉え続けなければならないわけで、それが実現できるならば、ある程度機動性を向上させても、その機動に目標捕捉性能を追従させることは容易い。結果的にクロックワークは絶対的な捕捉性能と正確な射撃能力、そしてある程度の回避能力を併せ持つ、きわめて攻撃的な機体となった。
 偵察機という分野は戦闘機などと比べると地味ではあるが、指令機の指揮下にあって「目」の役割を果たす偵察機はやはり必要不可欠で、その需要は決して少なくない。しかしこのクロックワークの場合、偵察機としても勿論優秀なのであるが、その攻撃性能の高さから主力戦闘機として用いられることが多い。
 尚、昨年S&G社はKnM社と技術提携してクロックワークをベースとした主力戦闘機を発売したが、それは双方の利害の食い違いから早々に生産中止になり、既に絶版となっている。




・MS−Kn051/C 汎用偵察機 Carrier Vision (キャリア・ヴィジョン)

キャリア・ヴィジョン
Product Code : MS-Kn051
Name : Carrier Vision
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : MEGA-Drive
/* thruster x 2
/* APG-motor x 4
Special Ability : FCS-LINK
Arms : None.
Fire Control System : ALEN-LINK
 KnM社製の汎用偵察機。発売はPC196年とまだ新しい部類に入るが、なかなかの低価格とその使い勝手のよさから、順調に売上を伸ばしつつある。
 当機の特徴はなんと言ってもそのFCS"ALEN-LINK"である。見てのとおりキャリア・ヴィジョンは武装と呼べるものを一切持っていないわけであるが、このFCSは同OS上で稼動する複数の戦闘機械のFCSと連動する機能を持っている。つまり、偵察行動の一環としてキャリア・ヴィジョンが捉えた標的に対して、他の複数の機体から間接攻撃を仕掛けることが可能なのであり、そういう意味では、この機体は部隊全体の「目」として十分以上の性能を発揮することが出来た。
 キャリア・ヴィジョンは機体分類上では汎用偵察機で、その分野では前述の
クロックワークと競合するはずなのであるが、しかしクロックワークは攻撃的性格を持った偵察機ということで一連の偵察機とは全く違った性能を有しており、このキャリア・ヴィジョンともシェアを奪い合うことはなかった。むしろ問題なのは宇宙専用ながらも同価格帯でトップのシェアを得ているハンドレッド・アイズで、まずは5年以上のロングヒットを飛ばすこの機体に勝利せねば、キャリア・ヴィジョンが定番の偵察機として定着することはありえなかった。
 しかし、ロングヒット商品の手強さを既にボニートハイロゥの競合戦で経験済みのKnM社の戦略は非常に手堅く、実際の運用結果から慎重に性能と価格の良好なバランスをアピールしてきた結果、最近ではしっかり中堅の偵察機として市場に定着しつつある。
 名前の由来はどうやら"carrier pigeon"(伝書鳩)らしい。




・SS−CF006/M 宇宙用偵察機 Hundred Eyes (ハンドレッド・アイズ)

ハンドレッド・アイズ
Product Code : SS-CF006/M
Name : Hundred Eyes
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 2
/* APG-motor x 4
Special Ability : None.
Arms : MRP x 2
Fire Control System : SUN-002S
 「贅沢は敵」が基本理念のCF社が製作した宇宙用偵察機。その理念どおりに不要な部分は極力削られており、ハンドレッド・アイズは偵察機として殆ど必要最低限の機能だけしか有していない。この機体は同様のコンセプトに基づく攻撃機
ファランクスよりも以前に製作された機体であり、コストパフォーマンス重視のCF社の製作方針が強く伺える。
 ところが、このハンドレッド・アイズには誰もが認める欠陥がある。少しばかりケチりすぎたせいか、Sunny-Corp製のFCS、SUN-002Sはこの機体に搭載した場合に限っては何故か一定以上の加速度をもって運動する標的を捉えることが出来ず、つまりメインとなるはずの高速機動戦闘時の攻撃力が事実上全く無いのである。しかし、CF社の他の部位に対するコスト削減技法が的確であるために、結果としてS&G社製のクロックワークに比べてコストを半分以下に抑えられることから、欠陥機であるにもかかわらずこの機体は意外なほどのロングヒットを飛ばしていた。
 しかし、最近は価格帯をほぼ同じくするキャリア・ヴィジョンにその座を譲りつつある。




・SFC−Su001/G 宇宙用浮遊砲台 Banisher (バニッシャー)

バニッシャー
Product Code : SFC-Su001/G
Name : Banisher
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 1
/* APG-motor x 3
Special Ability : None.
Arms : Rapid-MRPx6
Fire Control System : SUN-002S
 Sunny-Corp製の浮遊砲台。基本的には普通の無人砲台に移動能力を持たせたもので、前進時の加速力だけは戦闘機並に高いが、姿勢制御機構が最低限しか備わっていないために機動性に乏しく、航続距離もかなり短い。余計な機能を持たないことはシェアを獲得するための必要条件(前提として無人制御なので、安全性は問題にされない)ではあるが、中でもこのバニッシャーは、限定用途に特化されているために、本当に必要な機能以外は一切持たないのが特徴である。
 バニッシャーにとって唯一の攻撃手段となるのが、放射状に6門装備された速射式
MRPである。これはただ発射間隔が短いだけのMRPなのであるが、バニッシャー自身が回転運動を行いながらこれを使用することによって、擬似的に拡散MRPとして使用することが出来た。ただし、1回撃つとRコンデンサのエネルギーが完全に枯渇してしまい、しばらくは攻撃不能になってしまう。しかし、どうせ航続距離も長くはなく、破壊されたとしても大した損害額にはならないので(ボニートの1/20程度)、基本的にはそのまま使い捨てられる。
 搭載FCSは自社開発のSUN-002Sであるが、はっきり言ってしまうと、このFCSには、特に優れた点は一つも無い。しかし、運用するものが拡散武器であり、かつ複数同時攻撃が前提であるから、狙いはかなりアバウトで良い。指令機や偵察機のFCSと連動する機能があればそれで十分なのである。前述の最低限の機動性能というのはつまり、バニッシャーの機動力は唯一の武装である拡散MRPの照準を大まかに定めるために十分なだけだけあればいい、ということである。
 運用形態は戦闘機などとは根本的に異なり、バニッシャーは要塞などの防衛力として拠点周辺に多数配置されるか、使用すべき場所が拠点から離れている場合には指令輸送機などに目的地近傍まで輸送或いは曳航されて、局所的かつ瞬間的に火力を集中させるために5、6機まとめて投入される。その際、バニッシャーは戦闘機の標準サイズよりもはるかにコンパクトであることから一度に輸送できる数も多く、この意味でも大いに重宝がられた。
 尚、SFC-Su001はバニッシャーの宇宙用装備である。つまり、推進機構の換装により大気圏内でもこれを運用することは出来るのであるが、だからといって航空機のようにジェットエンジンに換装するのは非効率的である。要するに、中心軸に反転ローターを装備して、ヘリと同様の原理で浮遊機動を行う。




・SHA−NA012/C 宇宙用重攻撃機 R-Phantom (R−ファントム)

R−ファントム
Product Code : SHA-NA012/C
Name : R-Phantom
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
+ Alchemic Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 6
/* APG-motor x 4
Special Ability : None.
Arms : Rapid-MRP x 2
PAC-M.A=N x 2
Fire Control System : DT-028M
 スラスターの数がアポジモーターよりも多く、後退速度が前進速度よりも速いという、かなり非常識な重攻撃機。しかし、ジェネレータが
錬金炉を含めた完全循環炉であることからもそれが使い捨てのものではないことは明白である。推奨される運用形態は「初期状態で最前線に配置し、戦線を突破してきた標的があればそれに対して後ろ向きのままで追いつき、向かい合って壁となりつつ装甲と火力で叩き潰す」といったかなり奇怪なものであり、実戦配備が始まった時点では誰も信用していなかったのであるが、しかし大方の予想に反してR−ファントムは本当にそのような使い方をするのに十分な性能を備えており、現在までに各戦線で決して無視できない戦果をあげている。
 搭載武装は速射式MRPとPAC−M.A=N(Particle Accelarate Cannon - Model Andrew=Neumann/アンドリュー=ノイマン式粒子加速砲)。このPAC−M.A=Nは基本的にブリッツのPACと原理を同じくするものであるが、荷電粒子のとる軌道はむしろ段階加速式MRPに近く、ブリッツのそれと比べると弾速がやや遅い代わりに威力が格段に高い。
 それらを統括するFCSはDT社のDT-028Mであり、このFCSは異なるシステムに基づく兵装を複数同時に使用することを可能としている。つまり、速射式MRPとPAC-M.A=Nの両方を用いて目の前の標的に対して間断なく攻撃をし続けることが可能なのであった。更には設計段階からメインジェネレータのコンデンサに余裕を持たせているためにHGAによる装甲耐久力も半端ではなく、総じてR−ファントムはごり押し的戦術概念に適した、単位時間あたりの高い攻撃力と、できれば相手にしたくないほどの高耐久力を実現している。
 開発・製造は伝統的技巧と先駆的新技術の両立に定評があるナムロット重工(Namlotte Heavy Industory)。




・SHA−NA031/A 宇宙用重攻撃機 G-Alien (G−エイリアン)

G−エイリアン
Product Code : SHA-NA031
Name : G-Alien
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
+ Alchemic Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 4
/* APG-motor x 8
Special Ability : None.
Arms : Shot-MRP x 2
Spread-MRP
Fire Control System : ALEN-CCS
 同じくナムロット重工製の重攻撃機で、基本的には突出してきた敵戦力に対する「壁」の役割を持つ。ただし特性的にはより命中率重視で、後退速度は
R−ファントムに一歩譲るものの、敵単機に対する足止め能力と殲滅力が更に先鋭化されている。綿密な計算の上で機体各部に配置された姿勢制御機構と推進機構には亜光速機動時においてすら殆ど死角が無く、目の前の標的に張り付く能力がとにかく高いために、相手がいかに高い機動力を持っていようと、撃墜するまで決して逃すことは無いと言われる。更にG−エイリアンは元々命中率の高い拡散MRPに加えて逐次ロック方式の散弾MRPを装備、武装的にも一点に対する破壊力よりは命中率に重点をおいた構成になっていることが、その能力の先鋭化に拍車をかけている。
 G−エイリアンのメインジェネレータとコンデンサはR−ファントムと全く同一のものを使用しているが、センサーの露出を最小限に抑え、特に被弾が予想される個所を重点的に装甲で固めてあるために、実質的な耐久力はR−ファントムのそれを更に上回る。
 当機は197年1月にロールアウトしたばかりでまだ配備数が少ないが、既に相応の実績をあげ始めており、今後益々の活躍が期待されている。




・SHA−Su008/B 宇宙用重攻撃機 Stone Turtle (ストーン・タートル)

ストーン・タートル
Product Code : SHA-Su008/B
Name : Stone Turtle
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
+ Alchemic Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 4
/* APG-motor x 6
Special Ability : None.
Arms : Spread-MRP x 2
Fire Control System : DT-025Sp
 
バニッシャーで浮遊砲台という分野における独占的シェアを得ているSunny-Corpが製作した重攻撃機。同様に拡散系のMRPを装備してはいるが、しかしこのストーン・タートルは自社製のFCSではなく、DT社のDT-025Spを手堅く採用している。SUN-002Sは使い捨て用途のバニッシャーや安価が売りのハンドレッド・アイズに用いる分には問題にならなかったが、さすがにある程度の性能が要求される重攻撃機に使用するとなると、性能面での実績に疑問を禁じえなかった、ということである。
 さて、このストーン・タートルの実際の性能であるが、実はそれ単体での性能は、ナムロット重工製のR−ファントムG−エイリアンに比べると、それほど大したものではない。攻撃が1種類しか無く、耐久力もそれらの半分も無いのだから、総合性能も自然と知れようという物である。しかし、だからといって当機が使えない機体であるという結論が導かれるわけではない。問題はそのたった1種類の攻撃が双発の拡散MRPだったことだ。この拡散MRPは前方180度だけに射出されるタイプでそれぞれの消費エネルギーは通常の半分、しかも左右同時発射であるために実は意外と回避が困難で、通常機よりは十分大きなジェネレーター出力を以って所構わずこれを連発する(武装が1種類しかないので、切り替える必要すらない)ストーン・タートルは、敵にとってはあまりに目障りで、放置しようにも出来ない厄介な存在であった。
 ところで、前述のようにストーン・タートルには重攻撃機としてはそれほど耐久力が無いわけで、目障りであるならばさっさと集中攻撃をかけて落としてしまえばよい、と考えるのは一見妥当であるように思える。しかし実際の運用形態として、指令機のもとで行動するストーン・タートルは中隊、或いは大体規模の戦闘機群の先頭付近に配置され、状況に応じてその戦闘機群の奥に引っ込んだりまた前に出てきたりを繰り返す。つまりストーン・タートルは文字通り亀の首であり、真っ先に首を落とそうにもそれはかなわず、甲羅の役割を持つ戦闘機の大部隊をさきに引っぺがさなければならない。言い換えると、ストーン・タートルを擁する戦闘機部隊そのものが「石の亀」という一つの効果的戦力単位を形成しているわけである。
 この明確な戦術観に基づいたストーン・タートルは比較的手ごろな実売価格も手伝って初期配備数が多く、重攻撃機にしては異常な早さで市場に浸透していった。また、当機は多数の僚機と戦術的連携行動をとることが前提となっているが、拠点付近で行動する際には機動力より火力重視の浮遊砲台ときわめて相性が良く、ただでさえ独占的利益を得ていた同社製の浮遊砲台バニッシャーの配備数が更に増えることになった。そういった面でもSunny-Corpの的確な商売戦略は端倪すべからざるものであるといえよう。




・MSC−SG202/D+ 汎用戦略級指令戦闘機 Plus (プラス)

プラス
Product Code : MSC-SG202/D+
Name : Plus
Material : HGA
Generator : Photon Reactor x 2
+ Alchemic Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : MEGA-Drive
/* thruster x 6
/* APG-motor x 10
Special Ability : SCSi
Arms : Accelarate-MRP x 2
Spread-MRP x 2
Rapid-MRP
Fire Control System : ALEN-CCS
 いわゆる師団長クラス。このプラスはSCSi(Strategy Command Sight/スカジィ)による強力な指揮・統括能力を持ち、空母凡そ10隻分の戦闘機群をその指揮下に置く事が出来る戦略級兵器である。音速など足元にも及ばない驚異的速度で流動する戦況を認識しながら各機に逐次指令を与えるその演算処理能力は凄まじく、機内には戦闘母艦1隻が有する機能を遥かに凌駕する高性能演算機構が収められている。SCSiを搭載するプラスは、同じくネットワークの支配下にあってInter-FACEをOSとする戦闘兵器ほぼ全てに対する優先指揮権を持ち、自身は同じくSCSiを搭載している戦略級兵器か或いはネットワーク自体以外からは決して束縛されない。それは、それだけ信頼に足る能力を有していることの裏返しでもあり、ゆえに、このプラスが前線を指揮している限りそこを突破することは不可能だと言われる。しかし逆にいえばプラスが撃破されてしまった場合、残った戦闘機群は戦略的統制の取れていない烏合の衆であり、そこには大きな穴が空く。本作戦においても、まずはこのプラスを撃破することが第1の目標となろう。
 しかし、プラス自身もただの指令機ではない。機体外面を覆う装甲材の
HGAの耐久力はその機体のジェネレータ出力に大きく左右されるが、中核機能であるSCSiの機能停止を避ける意味も兼ねて、プラスには高出力の光子反応炉が並列で2基搭載されている。つまり、通常の戦闘機に比べて抜きん出た耐久力を誇る。また、自己防衛のために3種のMRP(そのうち2つは拡散型)を装備しており、攻撃力も決して侮れない。更にはいかなる方向にも瞬時に加速する大出力スラスターを装備(側方移動も可能)、それを支えるアポジモーター群も充実しており、機体幅にして通常機の3倍はある巨体に反して驚異的な機動性を誇る。
 搭載FCSは製品の欠陥発生率が低いことでは定評のあるALEN社のALEN-CCS(Cyclic Control System)で、これは複数の兵装を持つ機体に搭載するには最も無難なFCSと言われる。ALEN-CCSは複数種の兵装を使用するごとに、その都度システムを切り替えることによってシステムの競合を避けるとともに処理を軽減する。つまり、期待しうる最高の性能を発揮することは出来ない代わりに、いかなる種類の機体にも安定した性能を提供することに成功している。安定性が第1条件となる指令機プラスにはうってつけのFCS、というわけである。




・MTC−SG202/D++ 汎用戦術級指令輸送機 Increment (インクリメント)

インクリメント
Product Code : MTC-SG202/D++
Name : Increment
Material : HGA
Generator : Photon Reactor
+ Alchemic Reactor
Operating System : inter-FACE 197
Propulsive Power : MEGA-Drive
/* thruster x 6
/* APG-motor x 10
Special Ability : TCSi
Carrying Space x 6
Pull Arm x 12
Arms : Accelarate-MRP x 2
Rapid-MRP
Fire Control System : ALEN-CCS
 戦略級指令戦闘機
プラスの派生機種。SCSiの代わりにその簡略版の戦術級指令視界TCSi(Tactical Command Sight/タケシ)を搭載しているために指揮できる規模はせいぜい中隊から大隊程度のものであり、武装もそれほど充実していない。しかしその代わりに最大6機の戦闘機を同時に格納、更に12機までを曳航出来、万が一指令機が沈黙した場合などには、プラスと同レベルの速力を生かして即座に現場に急行、臨時戦力を輸送するとともにそのまま指令代行をも肩代わりすることが出来た。
 戦線が復帰するまでの場繋ぎ的役割が主であるインクリメントは耐久度という面においてはそれほど重視されておらず、メイン反応炉は1基(完全循環炉)しか持っていない。兵装もやや省かれて段階加速式MRPと速射式MRPだけになっている。
 戦闘機群のリーダー的存在。





#分類不能

 機動兵器の範疇に収まらないもの。



・RGB−00 特異点発生機構 Resonance (レゾナンス)/闇へといざなう黒き零点

レゾナンス
Product Code : RGB-00
Name : Resonance
Material : HGA
Generator : Annihilation Reactor
+ Photon Reactor x 3
+ Alchemic Reactor
Operating System : BIOS ver.ZERO
Propulsive Power : Rocket Motor
/* thruster x 12
/* APG-motor x 14
G2CS ver.ZERO
Special Ability : R2CS ver.ZERO
Arms : Resonance Wave
Gravity Pointer x 3
Fire Control System : BiFCS-EXAM
 レゾナンスとは、その名(留数演算子)が示す通り「特異点発生機構」である。つまり、本来は機動兵器の類ではなく、任意の座標にブラックホールを形成するための機構である。
 その出自は西暦末期にまで遡り、大元の原点はtry−αで開発された重力場制御を実現するための大掛かりな実験器具となる。それが実際に重力場を制御し始めた時点でレゾナンスという名称が付与され、当時の
RGBシステム(プロトタイプ)とともに開発は順調に進められていった。しかし当時のレゾナンスの制御に使用されたRGBシステムは、GシステムはおろかBシステムも安定してはいなかったし、Rシステムに至っては存在さえしていなかった。そのため、アニヒレィスを含むtry−αのメンバーは細心の注意を払ってレゾナンスの開発を進めていったが、研究所の都合で開発を急がなければならなくなり、当然の結末としてその暴走事故は起きた。悪名高い「破壊の羽音事件」である。その結果、アニヒレィスとともにレゾナンスの開発は永遠に凍結されることとなり、研究資料の全てとともにその存在は闇へと葬られた・・・筈だったのだが、唯一、研究主任のアニヒレィスの頭の中にだけ、その全てが残っていた。
 200年後に目覚め、瞬く間に地球圏を掌握したアニヒレィスは、木星圏に於いてレゾナンスの開発を再開する。ただし、それは単なる重力制御機構としてではなく、木星をブラックホール爆弾と化す為の機構として、である。200年の熟成期間を経た光子反応炉はレゾナンスの主動力源「対消滅炉」を起動せしむに十分な性能を持っており(元々は大型の核融合炉を用いていた)、また、シュタールの遺したRGBシステムZEROの存在があったために、200年の時をかけて遂に完成に至ったレゾナンスは、戦闘兵器としても比類なき性能を誇ることとなった。
 ところで、レゾナンスの全長は165mである。通常の戦闘機の平均的全長が10mから20m、指令機クラスですら50m前後であるのに対し、この165mというサイズは異常にも思える。しかし、旧世紀に於いて稼動実験を行っていたレゾナンスのシステム全体は合衆国国防総省の敷地一杯を使用しても収まりきれぬほどの規模を誇り、到底移動できるほどのものでなかったことを考えると、これはむしろ驚異的なダウンサイジングといえる。そして、その機動力であるが、古典物理学から量子物理学、そして光子暦に発展した原色物理学まで考えうる限り全ての見地から綿密に計算し尽くし、常識はずれの高推力スラスター群に加えて更に重力勾配制御を駆使して実現されるレゾナンスの機動力は、もはや機動力という概念を根本から覆すほどのものであり、その規格外の巨躯を全く問題にしていなかった。
 ただし、別の側面での問題が無いわけではない。その制御に用いられるRGBシステムZEROは確かに機動性向上に寄与しているのであるが、その反面、人体の負担を軽減することを主目的としていないために、パイロットにかかる慣性力を完全に相殺することが出来ないのである。そのため、レゾナンスを機動戦闘に用いるためには相応の覚悟を要する。
 メインパイロット(管制官)はユアン=アニヒレィス及び雪村純

Resonance Wave(レゾナンス・ウェイブ):留数伝播波
 冒頭でも述べたようにレゾナンス自体はそもそも戦闘兵器ではなく、同様にしてこのレゾナンス・ウェイブも武装ではない。レゾナンス・ウェイブとは特異点発生機構としてのレゾナンスに元々備わっていた機能で、グラビティ・ポインタと連動してブラックホールを形成するために必要な重力制御機構(現在の
Gシステム)、その中の更に一機能に過ぎない。
 レゾナンス・ウェイブの大まかな原理は、レゾナンスの機体周囲に展開される重力子フィールドを強力に振動させ、物質の分子配列を崩壊させる、というものである。つまり基本的にローアイゼンIIのラディカル・ガンブレイズと同じものであり、或いはそれ自体ラディカル・ガンブレイズのプロトタイプとも言うべきものなのだが、しかし元々重力制御に特化した構造のレゾナンスが発する重力波は桁違いに出力が大きく、完成されたシステムの中に無理なく組み込まれたラディカル・ガンブレイズなどとは射程も威力も全く比較にならない強力さを誇る。
 ただし、強力な分だけシステム影響下にある管制官にかかる精神的負担は大きく、本来ならばとても戦闘などに連続して使えるものではない、ということをここに明記しておく。

Gravity Pointer(グラビティ・ポインタ):重力基点指示子
 レゾナンスが装備する、全部で3基の球体状外部端末。3つのポインタそれぞれがレゾナンス本体と同等の機能を持つわけではないが、しかし本体からの信号を受信、増幅することによって、強力な重力場を形成することが出来る。更にレゾナンス本体と3つのポインタを完全な正四面体の頂点に配置して共振を起こせば、その中心を特異点として内部の物質・空間をシュバルツシルト半径以下まで圧縮することにより、ブラックホールを形成することが出来る。そして、それがレゾナンスの本来の機能でもある。
 しかし、戦闘兵器としてのレゾナンスにとって重要な機能はそのうちの受信・増幅までである。実はこのとき形成される重力場のエネルギーレベルは共振を起こさずとも既に十分危険なものであり、堅固な耐久力を持った重攻撃機、指令機、或いは戦艦や空母であろうと、その影響下にあって原形をとどめることは不可能に近く、直接ぶつかった場合などにはまず圧壊を免れなかった。つまり、それ自体を重力攻撃のリフレクター・ビットとして用いることが可能だったのである。  基本的にこのグラビティ・ポインタは無線制御ではあるが、しかし電磁波は重力の影響を大きく受けるので使用できない。よって、代わりに
Bシステム及びBiFCS-EXAMによる直接制御を行う。Bシステムの制御伝達子はB粒子であり、これは重力子と同レベルの高次元を伝播することが可能であったから、レゾナンスは空間・時間による制約を受けること無く、3つのポインタを操ることが出来た。
 度々しつこいようであるが、これを操作するのにレゾナンス・ウェイブ以下の精神負荷で済まされるなどということは勿論無いわけで、つまりレゾナンスはその機動のたびに物理的ダメージが蓄積、攻撃のたびに精神的ダメージが蓄積するという最悪のマン・マシン・インターフェイスを備えていた。それは到底、人が扱えるようなものではないといえるが、しかしその反面、BIOSを使用している以上、人間でなくては動かせないというのが、結局レゾナンスが内包する最も根本的かつ致命的な欠陥であった。


Prologue [] Operation [] Machine [] Technorogy [] Theory [] History [] Appendix [] Character [] Epilogue [] Postscript